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執筆者の写真湯山玲子

ノルウェーのジャーマニズムのジャズ窯変SKIDI(スカイディ)に圧倒されてしまった


 明日7月1日19時〜の「美人寿司の夜 〜世界音楽篇①ノルウェー」にてコラボする、ノルウェーの男女ユニット<SKIDI>のライブに行ってきました。

 私、生演奏を聴いたのがこれが初めてで、

 あえて、言わせていただきますが、

 彼らの音楽は絶対に体験した方がいい!!

 音楽の質で言ったら、彼らは本当にフジロックでも、ライジングサンでも、メタモルフォーゼでも、大勢の観客を音楽の力で圧倒させることができるほどの実力者なのですが、このご時世、かつてのようにCD発売を見込んだプロモーション費で招聘ライブ、というような図式が通用しなくなった今、今回のような「知る人ぞ知る」来日になってしまうことは避けられない現実なんですね。

 さて、このユニットを一言で言えば、北極圏に住む少数派民族"サーメ人"の伝統音楽「ヨイク」のボーカルと、ノルウェーの最先端を行くジャズ・ベイシストの異色デュオということになります。「ヨイク」は彼らの精霊信仰におけるシャーマニズムとも深い関係があって、「こぶし」を多用する唱法は、演歌や民謡でもって私たち日本人には大変に近しいもの。ユーラシア大陸の一部に見られる、ホーメイというダブルトーンボイスも用いられます。

 すべての民族音楽の響きは、それだけでも必ず、人の心の何かに訴える何か、無意識領域に及ぼす力があるのですが、このSKAIDIはそのベースアレンジとも相まって、たとえば、この東京のオフィスビル街で聞いたならば、コンクリートで覆われた地面から、わらわらと地霊が召還されるような、爆発力を秘めているんですね。それはそれは、美しくて、破壊力のある爆弾です。

 もちろん、彼らの音はFacebookやアルバムで知ってはいましたが、まさかこれほど凄い音楽性の持ち主とは!

  驚愕しつつ、こんな凄いミュージシャンとお手合わせする、我らが美人寿司はどうなのか? との恐怖が一瞬心をよぎりましたが、今回は私はディレクターに退き、謎の寿司職人(某有名シェフ)を三顧の礼を持って招き入れ、ノルウェーから招聘した鮭の野郎、二匹とともに、胸を借りる覚悟で臨む次第。

 実は、本物を見る前に、私の心にひとつ疑念が会ったのは事実。


 その疑念とは、ワールドミュージック系が往々にして落ちる罠である、「西洋楽器使いがエスニック奏者の猛獣使いに見える」という点。もちろん、前者Aが本当に後者Bの音楽性に感動したからこそのセッションであろうことはよーくわかっているのですが、その真摯な気持ちとは裏腹に、結局、AはBを前にして自分の持っている案外と狭い音楽のルールや構えを全く変えずに演奏するものだから、結果、「器は我々、西洋音楽の構造とコード進行をご用意しましたら、その上で自由にやってくださいな」的な、まあ、言ってみれば、単なる安直なお手合わせ、で終わる場合が、今までの経験上、大変に多いのです。たとえば、「ブエナ・ヴィスタ・ソシアルクラブ」ね。あのドキュメンタリーがなし得た偉業はみとめつつ、ライ・クーダは、彼らと一緒に音楽を演奏しなくたっていいじゃないか(まして、息子がドラムで)ですとかね。こちらはまだいいとして、ヨーヨー・マが嬉々として行っているシルクロード・アンサンブルの残念な結果(元々の楽器が持っている、独特のタイム感や音程がアンサンブルとして漂白されてしまっていてびくりとも面白くない)などを見るにつけ、暗澹たる気持ちに成ることが多いのですが、SKIDIにはその残滓さえ無い!


 スカンジナビアの第一線級のヨイク歌手、インガ・ユーソを発見し、惚れ込んで、自らの西洋楽器ウッドベースを見事にヨイクの側に"融解"しえた、ベースのスタイナー・ラクネスには、明日のインタビューでその辺をとことん聞いてみたいものです。ちなみに彼のベースアプローチは、ジョ二・ミッチェルと組んだ時のジャコ・パストリアス、ということは、チャールス・ミンガス似でもある。

 ちなみに、ライブ共々その模様は、Ustいたします。


 それとですね。

 後半は、SKIDIと例の「不協和協和音寿司の会」のメンバーの権藤知彦(ユーフォニアム)、田中邦和(ベース)、一ノ瀬響(キーボード)の面々がセッション乱入。SKIDIワールドに、この業界の手だれたちがどのように遊んでくれるかが、本当に楽しみでもあります。


 これ、一日前の深夜のブログになってしまいましたが、自分のイベントとはいえ、相手の音楽があまりに素晴らしいので、音楽好きのひとりとしてあえて、宣伝させていただいた次第。

 ご興味がある方は、ぜひに青山の<月見ル君思フ>に、お運びいただければ幸いです。

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