この師走のはじめ、12月5日(火)点灯式に湧く、表参道ヒルズにて開催された、第2回「美人寿司の夜」。ポストクラブ時代のクラブの在り方をシアターや様々な観点から提案し、実験する試みの第2弾は、<和モノ>。京都は島原、輪違屋の如月太夫と雅楽道友会の演奏、鈴木寅二啓之の「顔の美術」などの強力コンテンツがお目見え。恒例の、寿司は・・・。派手派手キモノ姿と日本髪にて世界のクラブや、パーティにお呼ばれしては寿司を握る、おもしろ寿司パフォーマンス、ぶりは、今回rainbow roll sushiさんとのコラボにて、バージョンアップ。
体感という意味では、京都の老舗、小田章の協力を得た着物のお披露目と仕掛けも加わって、着物と、着物というステキな“拘束着”を身にまといつつの異世界が出現したのでした。
さて、太夫について、です。 この日、ご存知の通り、表参道はの名の下に、行灯のようなモダン&ジャパニーズのイルミネーションが点灯。そこに、突如、禿の少女ふたりと傘持ちを引き連れた太夫が登場。そのゆったりとした内八文字の歩みとゴージャスで幽玄な雰囲気は表参道を一瞬にして、いにしえの日本へとタイムスリップ。(この模様は6日の読売、東京新聞の一面に掲載されました)
もちろん、パーティー中の花型は道中と、かしの式。
ここで、ちょっとうんちくを披露。太夫とは、花街の最高位の女性のこと。舞踊、芸事だけでなく、香道、茶道、和歌、俳諧など、武家、公家、上層町人の相手をつとめるだけの高い教養を持ち、正五位の官位を持つ格式を誇る存在。太夫が呼ばれた揚屋(今で云う宴席の場)に向かう時の道中、ふたりの禿を先に立て、内八文字を踏んで練り歩くのが「太夫道中」。お客と対面する時の儀式が「かしの式」で、暗がりの中から現れ出でるその出で立ち、舞や胡弓の響きは幽玄そのもの。島原の輪違屋では、木造の雰囲気のある館で、ロウソクの明かりの下で行なわれますが、ここでは広さと空間を生かした照明でムード満点。この複雑な結髪は全て自前のヘア。胡弓の響き、錦の装束、所作の全て・・・。全てが独特の美意識に貫かれており、日本文化、というものの持つ、スタイルの多様性を感じさせてくれます。
さてさて、この度の目玉のもうひとつである、雅楽。
ワールドミュージックと言われる、非西洋音楽の中には、倍音やいわゆる不協和音の響きを持つものが少なくないのですが、中でも雅楽はその独特のタイム感覚といい、構築のされ方といい非常に美しいもののひとつ。1200年の歴史を誇る世界最古の合奏音楽であるとともに、その響きは、最先端のクラブミュージックに慣れ親しんだ耳にも、相当刺激的に響き渡ります。演奏は<雅楽道友会>。400年前、京都の帰化人系氏族・秦 河勝の次男、聖徳太子の舎人長をつとめた家系である、故・薗廣教氏を中心に有志が集い、民間への雅楽の普及および技術向上を目的とし活動を続けている気鋭の集団です。 今回の演奏は、『管絃』。雅楽において最もオーソドックスな演奏形態で、三管(鳳笙、篳篥、龍笛)、三鼓(鞨鼓、太鼓、鉦鼓)、両絃(楽琵琶、楽箏)にて演奏され、調子は、現在は壱越調(いちこつちょう)、平調(ひょうじょう)、双調(そうじょう)、黄鐘調(おうしきちょう)、盤渉調(ばんしきちょう)、太食調(たいしきちょう)の六調子で、「平調音取(ひょうじょうねとり)」、教科書に載っていたりもする「越殿楽」。鳥のようなお面をかぶった踊り手が加わっての、『舞楽』も披露。1400年前に由来する、舞楽の中でも最も有名な「陵 王 【りょうおう】」が披露されました。実はこの雅楽、もとは、大陸から仏教とともに渡ってきたもの。楽器の調べやその仮面劇は遠い、インドやバリ島あたりの影響を感じますし、これ、もっと世の中に、音楽として知られてもらいたいもののひとつです。もちろん、乃木神社のような静寂の中で聴くのもよし、今回のように祭りのざわめきの中に音が“在る”というのもひとつ、本来の姿でもあるのです。
<顔の美術>の鈴木寅二啓之さんは、様々なメイクアップ表現を模索する中、現在は現代美術家としても活動している。人々の顔、を顔の持ち主とともにコミュニケートして作り上げる=顔の表現者が「美しい顔」へと向かう、世界でも他に類をみない新しい表現を行っている。今回は、パーティーの趣旨に賛同していただき、ブースを展開していただきました。顔に和紙のラインが一本はいるだけで、人の表情と心は華やぎを得ます。お祭りの時に、白いおしろいを鼻に塗る、という風習を思い出しました。これ、一般のお客さんは、尻込みしちゃうかな、というのは杞憂でした。辻が花の素晴らしい着物を着たおばさまが童女のように、頬に赤いラインを走らせているのに、ちょいと感動!
「美人寿司の夜」といえば、お馴染みの寿司関係。第1回目は「サクラバラちらし」でしたが、今回は会場が表参道ヒルズということもあって、rainbow roll sushiさんとのコラボが実現。派手派手キモノ姿と日本髪にて世界のクラブや、パーティにお呼ばれしては寿司を握る、おもしろ寿司パフォーマンス、美人寿司。かたや、アメリカに渡り、自由な発想のもとで新しいスタイルを得てお里帰りした“ロールスシ”を主体にした、スタイリッシュで独創的な寿司と空間が評判の、rainbow roll sushiさんとの出会いですが、驚き×ユーモア×革新、というお題を見事に遊んでいただきました。個人的には、やはりあんこの巻きスシが秀逸。あんこって、小豆と砂糖なのですが、これ、個人的にもこれ溶いてピースープの味付けにしたり、パンに塗って食べてもおいしい、わりと使える食材として注目していたのですがまさか、こう来るとは、のレシピ。それをも飲み込む酢飯の実力にも感服でした。
● イクラ宝石ゴージャスかっぱロールスシ ージャンニ・ベルサーチの思い出風味ー
この季節は築地にどーっとイクラが出回る旬。単なる魚卵なのに、宝石のような造形美を誇るイクラには、香りが爽やかで強めのハーブのリルをトッピング。スモークサーモンには、ジェノベーゼソースのバジルが利いて、ミラノコレクションはベルサーチの楽屋裏にて、シャンパンの乾杯とともに食したい、という一品。
●美人肌コラーゲン穴子ロールスシ ー美人へのお手軽な道風味ー
コラーゲンたっぷりの穴子とジュレ。さらに繊維質を取れる、かんぴょうも加え、オクラのペクチンとムチンにて整腸作用、糸唐辛子のカプサイシンでダイエット、練りゴマにてストレス撃退、という美人仕様。あっ、オリジナルのバルサミコ酢ソースもかなりイケます。ちなみに、酢は抗酸化作用でやっぱり美肌、ね。
●あんこ、というパンク素材格闘ロールスシ ーやったもん勝ち風味ー
美人寿司のモットー、驚きとユーモア、そして革新、というお題を、レインボーさん、こんな剛速球で返してくれました。「あんこ、豆とお砂糖だから、わりといろんな味と合うんだよね」とシェフ。確かに、今のグルメ最先端は“甘さ”にフォーカスされています。「エルブジ」のフェラン氏にもぜひ、味わっていただきたい一品。
500人近い人々にご来場いただきまして・・・
開演前、雑誌『TOKION』の撮影。太夫さん、ふたりの禿ちゃんに加えて、遊びにきていた野宮真貴さんやラグフェアーの奥村くん、ロマンチカのみなさんにも急遽参加していただき、なんとも強烈な集合写真になっちゃいました。
ロマンチカの横町さんと画家の金子國義さん。
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